牧師便り

変わらない命の重さ  :  池増 牧師

英国のロンドンで去る7月7日、連続爆破テロが起こり50人以上のかけがえのない命が失われました。前日の6日に2012 年夏季五輪のロンドン招致が決まったばかりで、市民の間には祝賀ムードが盛り上がっていただけに奈落の底に突き落とされるような衝撃であったに違いありません。犠牲者の遺族の悲しみはいかばかりでしょうか。どんな理由があるにせよ、目的のためには手段を選ばないテロには強い憤りを禁じえません。

先日、NHKスペシャルでアフリカのスーダンの内紛による虐殺の実態とその背景を探る番組がありました。今年1 月、20年続いてきた政府軍と南部の反政府勢力との内戦に終止符が打たれた一方で、西部のダフール地方ではアフリカ系とアラブ系住民の間で虐殺が始まりました。政府軍も一枚噛んでいることもあって、AU(アフリカ連合)が調停に乗り出しましたが、交渉は暗礁に乗り上げ、その間にアフリカ系住民の集落は焼き討ちされるという最悪の事態が起きました。調停を成功させるためには、現在のAUの平和維持軍の10倍の兵力を要し、双方の集落に駐留させる必要があるというのです。

10年程前、ルワンダで政府軍と暴徒化したフツ族によって80 万人から100万人のツチ族と穏健派フツ族が殺害された事件がありました。これほどの犠牲者が出た要因に介入したUN(国際連合)の平和維持軍の非力が指摘されました。ベルギー兵士10人が殺害されたため、新たな兵力は派遣しないとUNが決定したためでした。派兵への議論の中で、「ベルギー人10人は、8 万人のアフリカ人の命に相当する。そんな大きな犠牲を払えない」との発言があったというのです。恐るべき人種差別的発言に、愕然としました。悲しくなりました。資源もなく、国益もない所に犠牲的な投資などできないという、まさに功利主義が基盤になっています。

私たちは、他民族に対してだけでなく、身近にいる病弱な人、高齢者、障害を持つ人、不遇にある人たちに対して同じような思いを抱くことはないでしょうか。自戒したいものです。

だから、何事でも人々からしてほしいと望むことは、
人々にもそのとおりにせよ。

聖 書